染織とは布を「染める」ことと「織る」ことであり、染め物、織物を総称して「染織」と呼びます。
工藝美術では、染めていない糸で織り上げた織物(白生地)に染料や顔料を用いて表現されたものを染色作品と呼び、糸の段階で染め、その染めた糸を用いて織りあげ、表現されたものを織作品と呼びます。
染織とは布を「染める」ことと「織る」ことであり、染め物、織物を総称して「染織」と呼びます。
工藝美術では、染めていない糸で織り上げた織物(白生地)に染料や顔料を用いて表現されたものを染色作品と呼び、糸の段階で染め、その染めた糸を用いて織りあげ、表現されたものを織作品と呼びます。
染色には様々な技法が存在します。基本的には防染技法(布が染まるのを防ぐ)の違いでそれぞれの技法が確立されています。
江戸時代中期にとても人気のあった扇絵師、宮崎友禅斎の描く扇絵を着物の文様に出来ないかと考えだされた染色方法が手描き友禅です。友禅とは宮崎友禅斎の名前に由来しています。絵画的な文様を染めることを実現するために、文様の輪郭に細い糊を置き防波堤の役割をさせることによって、隣り合う色が滲まないようになり、多彩で緻密な色使いを可能にする画期的な方法が生み出されました。白生地から一つの作品が完成するまでにおよそ20以上の工程があります。生地に下絵を描きます。その下絵に沿って、柿渋を引いた紙の筒に金の先口を付けたものから糊を細く絞り出して、糸目糊を置いていきます。その中に筆や刷毛で染色していくことで、隣同士の色が混ざることなく美しい鮮明な染めが生まれます。この後、友禅を施した部分に蝋伏せや糊伏せをし、地染めをします。染料を定着させるための蒸しなど、いくつかの工程を経て仕上げます。糸目糊を置いた部分は、糊を落とすと、くっきりとした白い線として残り、鮮やかな色使いとこの白い線とのコントラストがデザイン的にも優れており、友禅染めの美しさを決定する要素になりました。
絞り染めでは布の一部に糸で縛る、縫い締める、折るなどして圧力をかけた状態で布を染めることで、圧力のかかった部分に染料が染み込まないようにし、模様が作られます。
糸で絞った生地をまず水で濡らし、その後、染料液に付けて染めます。絞って圧力のかかった部分に水が元からある為、後から染料が侵入することを防ぎ、模様が出来上がります。
板の間に挟んで強く締め、その圧力によって染料の浸透を防いで文様を染め出す染色法です。
布を複数回折りたたみ、その布を板で締めることで様々な美しいパターン化された柄を染めることが出来ます。板に模様を彫り、その模様を白抜きで表現するものや、板に穴をあけ、その穴から染料を流し込み、表現することもできます。
ろうけつ染めとは、蝋を熱で溶かした液状のろうで布地に模様を描き、描いた部分を防染(染まらないようにする)し、染色した後に蝋を取り除く技法です。
中国では新疆ウイグル自治区ホータン地区・ニヤ県の精絶国遺跡の東漢墓から蝋染の綿布が発見されていることから、2世紀~3世紀からろうけつ染めの技法があったと見られる。
三纈(サンケチ)の一つの技法で最も古くからある技法の一つであり、日本にはシルクロードを経て中国から飛鳥・奈良時代に伝えられました。当時は蝋を置くのにスタンプのような型を使用し模様を付けていました。現在では筆に蝋を浸み込ませ、蝋をおいていくのが主流となっています。
型を用いて模様を染める染色法です。型付染ともいい、特に絵画的な模様をもつ工芸的なものを型絵染とも称します。布地のほか和紙,皮革にも応用されます。一般的な方法は型紙を当て防染糊(※1)や色糊をおいて模様をつけ、色差しやすり込み(ステンシル)などにより単色あるいは多色に染めます。代表的なものに中形、紅型(びんがた)、小紋、型染友禅などがあります。
※1防染糊とは型染めで使用する着色防止のために用いる糊です。もち米、米糠、塩に石灰を少量入れて、煮て作る糠糊や、ゴムを成分とするゴム糊があります。 型染めでは、型を置いた上からへらで糊を引きます。友禅染では糊の使い方にいくつか種類があり、模様の輪郭線に筒描きで細く糊を置く糸目糊というものや、伏せ糊といって、防染したい箇所を糊と挽粉という木の粉やおがくずで覆って防染するものなどあります。
シルクスクリーン捺染は、先に紹介した型紙を使用して模様を刷り込むステンシルの技法が起源であり、これにヒントを得たイギリス人のサミュエル・シモンがスイス製のシルクを使い「シルクスクリーン・ステンシル」と名付けて、1907年にイギリスで特許を取得しました。これがシルクスクリーンと呼ばれるようになったきっかけと言われています。
シルクスクリーン捺染とは孔版印刷の一種で穴の事を意味する「孔」の字が示すように目の粗い絹(シルク)の布を張った枠(紗といいます)にインクが通過しない孔(あな)と通過する部分の孔を作ることにより版を製版します。現在ではコストの高いシルクではなく、ポリエステルやナイロン製の紗が使用されています。
その版に染料と糊を混ぜた色糊を乗せスクイージやスキージと呼ばれるゴム製のヘラのようなものを使って色糊を押し出すことにより布に模様が描かれます。
工芸素材の中で染や織を施す繊維は人と自然や構造物の間に入り緩衝、保護、遮断などに使用され衣服のように常に身近に存在するものとして認識されています。衣装においては着用する人物の地位やその人物を象徴するものとして発展してきました。
作品としては着物、帯、壁掛け、タピスリー、パネルなどの平面作品、前面に飛び出した半立体的な作品、織った布を立体に仕立てた作品など多くの作品があります。
織機を使用するのが一般的ですが、多様な表現のため織機を使用せずに自由に糸を扱ったものや編む、組む、並べるなどの見せ方、羊毛を縮絨させたフェルト、パッチワークや刺繍や縫いを使ったものや繊維以外の素材などを使うものなど作者の考えと作品の独自性のため様々な方法が行われています。
織の素材としての糸は綿、麻、絹、毛、化繊、それらを混紡した既製の糸、糸そのものを紡ぎ撚り合わせ作ることや、綛を括って防染した絣糸、布を切り裂き、糸として使用する裂き織など、作者の独自の表現技法に合わせて使用されています。
織は織機にかけたたて糸を上下させた間によこ糸を通して行くことで布が作られます。
繊維素材、糸の太細や色彩、織組織などを組み合わせ作品ができあがります。
平織、綾織、朱子織を三原組織といい、すべての織物はいずれかの組織を変化させたものです。通常の織はたて糸よこ糸が表れその色彩は糸の密度や太さによって様々な表面の見え方を表現できます。一方で織の作品として多く使用されている綴れ織はよこ糸でたて糸を包み込むような技法でたて糸の影響を受けることなくよこ糸のみの色彩が表れ、図柄は作者が手作業で織り分けて織り進んで行きます。
京都には織の大きな産地である西陣があり、代表的なものに帯がありますが綴れ織のように手作業によるものとジャガードを使った紋織物があります、作った図柄をコンピューターで処理し同じものをいくつも作ることができます。また分業という仕組みが作られそれぞれの工程で作業を深く研究した熟練の技術が発展して西陣織の精度を上げることに貢献してきました。
平織 |
綴れ織 |
絣(よこ絣) |
紋織(ジャガード) |