会員ページ | English

工芸美術とは

皮革(ひかく) Leather

 皮革の歴史は、約50万年前の人類誕生(北京の周口店)の頃から始まっています。古代アルタミラの洞窟、タクラマカン砂漠で見つかった羊皮の靴、エジプトの革のサンダル、アラスカのエスキモーらの衣服や住居に動物の革を利用していた当時からずっと今日まで革の用途はあまり変わっていません。
 皮革の皮とは生の皮のことで、そのまま置くと腐敗するので、鞣(なめ)す作業を経て革になります。革の鞣しには、昔は泥や唾液など、現在では、植物タンニン鞣しとクロム鞣し(塩基性硫酸クロム)があります。その作業により、革は耐熱性、柔軟性、通気性、可塑性に富み加工しやすくなります。
 日本には、中国、韓国より皮革の鞣しの技術が伝来し、正倉院宝物の袈裟箱、仏具、中世の武具、甲冑、馬具、江戸時代には火消装束や、オランダから長崎へ持ち込まれた金唐革と多様に発展しました。また第二次世界大戦後アメリカの進駐軍により、流行したレザークラフトは現在も愛好され、実用的な技術に留まることなく、現代の工芸美術の世界に深く根付いて、多くの作家により革の特性を生かした様々な表現が追求されています。
 作家の内なる感情から生み出された独自の図案をもとに、革から醸し出されるエネルギーと包み込まれる柔らかさの中にあって、いかにデザインと融合していくかです。革を折ったり、穴をあけたり、積み重ねたり、染めたり、レリーフにしたり、手ごわい革をいかに自分のものにするかで、作品の形になります。


素材について

 革の素材は、牛、馬、羊、豚、等のタンニン鞣しとクロム鞣しの革を用途によって使いわけます。革の厚さは一般的には、0.5mm~2mmで、サンダルや靴などは5mmの革を使用しています。また金唐革は合金箔を貼るので0.4mmの羊や子牛の革を用います。皮影劇は、使用する皮は動物の皮を鞣し、生革を作り透明感のあるものを使用します。0.5mm~2mmの厚さのものを使用します。


技法について

 革の特性を生かして、革を彫る、編む、折る、染める、切る、縫う等、様々の形に対応が可能です。革は有史以来、人類と共に、現在も日常の中で共に暮らしてきました。そして、時代と共に様々な分野に分かれて、発展していくようになりました。


レザークラフトの技法

 タンニン鞣しの革に原図をカービングし、その周囲に工具をあて、木槌で打って彫りに立体感を出します。彫りの種類には、伝統彫り、逆彫り、透かし彫り、線彫り、写生彫り、浮彫り等があります。

 染色はアクリル絵具、液体染料、金箔、銀箔、顔料等です。革は1㎜~2㎜の厚さのものを使用します。


金唐革(きんからかわ)技法

 金唐革は、粘着性のある特殊な天然塗料を使って合金箔を革全体に貼り 原図を元に作成して、金型に入れ、プレス機に圧力をかけて文様を革に型押しをします。そして、金ニスで金色に着色後、絵の具や、顔料、金箔、銀箔、等で彩色して仕上げています。

 金唐革は、イタリアをはじめヨーロッパの宮殿や寺院の革壁として使われ、ルネッサンスからロココ時代までの約300年の間にだけ作られた幻の芸術と呼ばれています。日本には17世紀に徳川幕府に献上され、明治時代には宮殿等で使われていた古いものが日本で煙草入れや薬籠(薬箱)等に貼られて珍重されました。ロココ時代以降、造られなくなり、この金唐革は科学の発展と長年の研究により現在日本で復元されています。


皮影戲(かわかげげき)[ピーインシー]技法

 皮影戲とは革の影絵を用いて芝居をする演劇の事で、影絵の人形は、ロバ、ヤギ、牛、馬、などの動物の皮を鞣して生革(半透明)を作ります。生革に下書きを描いて、繊細に彫刻をし、その彫りは、3000種類ほどあると言われています。絵の具や液体染料、金箔、銀箔、等で彩色したものに桐油を塗って乾かして仕上げています。

 中国影絵の歴史は唐の時代で、当時の人形は紙人形でしたが、南宋時代から生革が使われるようになり、トルコから南アジア、インドネシアまで広がり、各地独特の影絵人形が散見されるようになりました。皮影戲は2011年ユネスコで人類無形文化遺産リストに登録されています。


ページのトップへ戻る