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工芸美術とは

金石 Metal and Gemstone

 金属と鉱物を素材にし、彫・鍛金と砡(ぎょく)彫刻を併せ持った表現を金石(きんせき)造形と言います。

 ここで言う「金石」は中国で古来使われている[金属,石に刻まれた文字]ではなく、明治時代に西洋から入ってきた鉱物学を当時金石学と呼んでいたことから使われています。金工の項で金属については説明されていますので、ここでは砡彫刻について説明します。

 鉱物を素材とした造形は砡彫刻と呼ばれています。日本では縄文時代、翡翠(ひすい)を素材として装身具を作ったことから始まります。その後、古墳時代には勾玉を代表に、玉(砡)とも呼ばれ、翡翠をはじめ碧玉(へきぎょく)や瑪瑙(めのう)、水晶を素材として作られました。正倉院にも鉱物を素材にした玉製宝物が多数残されています。その後、装身具や工芸品として使用されることは稀でしたが、仏像の玉眼や肉髻珠、舎利容器など鎮壇具や水晶玉と言った仏具として使われました。近代では水晶の産地である山梨県を中心に水晶彫刻が行われ、技術が継承されています。

素材について

 砡彫刻の素材は多岐に及びます。日本で古くから扱われてきた、水晶、紫水晶、紅石英、瑪瑙、玉髄、碧玉・赤玉石などのジャスパー、クリソプレーズなどは二酸化珪素を成分とする石英という鉱物です。また水晶の中にルチルの結晶を包有したものは、ルチルクォーツと称して取り扱われています。多彩な色を発するオパール、黒曜石(オブシディアン)は天然ガラスの仲間です。ラピスラズリ、トパーズ、アクアマリン、トルマリン、ネフライト、蛍石、などは半貴石と呼ばれています。翡翠(ひすい)は翡翠輝石とオンファス輝石からなる岩石です。宝石として知られるルビーやサファイアと言ったコランダムやエメラルド、等も使われます。


技法について

 砡の研磨について、有史以前から砂岩や結晶片岩、石英を多く含んだ砂が用いられていました。時代とともに硬い物質が見つかり、天平時代にはガーネットの砂が使われていたようです。ガーネットは現代でも研磨剤としてサンドペーパーなどに使われています。またエメリーと呼ばれるコランダムなどを含んだ岩石が使われてきました。その後物質の合成が行われるようになって、炭化珪素(モース硬度計9.5)や酸化アルミニウム(アルミナ・モース硬度計9)が安価に作られるようになり、これらが研磨剤の主流になりました。いまや、地球上でもっとも堅い物質ダイヤモンド(モース硬度計10)が主流となっています。

 研磨には固定砥粒として研磨材をボンドで固めた砥石が使われたり、金属に蒸着したり埋め込んだりした回転工具(グラインダーやリューター)が使われます。また鉄やアルミニウム、木材の回転工具に研磨剤と水などを混ぜて石を削る遊離砥粒の方法もあります。どの方法を用いるかは素材によって使い分けています。

 磨き上げるには徐々に研磨砥粒をこまかくしてゆき、表面の傷を徐々にこまかくして、光沢を出します。硬度の高い素材はダイヤモンド、水晶の仕上げには酸化クロムや弁柄、非晶質(ガラス)のものには酸化セリウムが使われます。


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